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【Colorful Interview】市川由紀乃が表現する妖艶な世界〜咲いていろどり 散ればそれまで〜新曲「花わずらい」

デビュー30周年を迎え、歌謡界のトップアーティストとしてまい進し続けている市川由紀乃。彼女が4月26日に発売した新曲は、一夜わずらう恋ごころと葛藤を美しく儚く表現した「花わずらい」。市川の憧れの作詞家・松井五郎氏と、第二の師匠・幸耕平氏による作品で、リスナーを華やかで妖艶な世界にひき込む。市川自身が「大好きすぎる歌に出合ってしまった」と話すこの楽曲。歌に向かい合う心意気を熱く語ってくれた。

 

松井五郎先生の言葉へのこだわりを強く感じます

 


記された音と詞だけを
正確に歌えても
心に響く歌にはならない
はじめてスタジオで聴いた
その歌には
行間に潜む心情や
残り香のような倍音や
言葉を接ぐ息ひとつにも
「市川由紀乃」の彩があった
歌は歌手のために
仕立てるものだが
いつ誰と出会うかで
運命は変わる
「市川由紀乃」
という歌手に
出会えたこの歌は
それだけで
既に
幸せだ。
松井五郎

 今回作詞を手がけられた松井五郎先生からのメッセージが、発売前に公開されましたね。由紀乃さんと出合えたこの歌は「それだけで 既に 幸せだ」なんて、素晴らしいお褒めの言葉ですね。

市川 本当にうれしかったですね。レコーディング前に、私から松井先生に質問したいことがいくつかあったので、ディレクターさんを通じてお聞きしたんです。先生が質問の答えと一緒に送ってくださったのが、このメッセージ。“本当に先生が書いてくださったんですか?”と思ってしまうほど、私にはもったいないお言葉で。それだけ責任を持ってこの歌を届けなければいけないと、先生から良いプレッシャーをいただきました。私は昔から、松井先生の作品が大好きです。安全地帯や工藤静香さんの曲を聴いていましたし、松井先生が描く女心が好きでたくさん感銘を受けてきました。私にたくさんの力をくれた歌を作られた先生が、今回、私のオリジナル曲を手がけてくださったということには、すごい感動がありますね。

初めてこの「花わずらい」を聴いたときは、どう思われましたか?

市川 今回は曲が先だったので、かなり早い段階から幸先生のメロディーを聴きながら、“ここにどんな言葉が入るのだろう”という妄想が広がるばかりでした(笑)。実際に松井先生の詞をいただいて、自分で口ずさんでみたら、“あ、やっぱり松井先生だなあ”と感じるフレーズがいっぱいありました。

とくにそう感じられたフレーズはどこですか?

市川 とくに感じたのは、「抱いて あやとり 泣けば まぼろし」というところ。“”抱いて”と“あやとり”という言葉が一緒になると、さまざまな想像ができます。あやとりは糸だから、いろいろやっているうちにこんがらがってしまったのかな、とか。男と女の間に起こる出来事や、主人公の女性の心模様を「あやとり」と表現されたのは、さすが松井先生ですよね。他にも“見紛(みまご)う”や“泥濘(ぬかる)む”は、日常的には使わないですよね。でも先生は、ここではこの言葉をこういう漢字でと考えられたのでしょう。そういう先生のこだわりを、本当に強く感じる歌ですね。

編曲の佐藤和豊先生、作曲の幸耕平先生、作詞の松井五郎先生と

 

 

“抱いて あやとり 泣けば まぼろし” …こだわり抜かれた歌詞に感動

 

ワインの小瓶を 空けました
酔うには ひとりじゃ 肌寒い
来てはくれない 人の名を
闇夜にくるんで 燃やしましょう
(「花わずらい」歌詞より)

 

「闇夜にくるんで 燃やしましょう」。寂しさをひっそり葬る感じがします。そんなときに女性がひとりで飲むワインは、小瓶でちょうどいいのでしょうね。

市川 私もそこ、好きです(笑)。“小瓶”というところで、かわいらしい女性像が見えてくる。私は自分と年齢が近い女性のイメージで歌いました。「治れと摩(さす)れば また痛む」ほどの傷は、どれだけ深いんだと思います。つらくても翳りを見せず、より輝く、より美しく咲くんだという強さのある主人公だと思います。私はこの歌が本当に好きで、歌うのが楽しみな反面、好きすぎちゃうので熱量を自分で調整しなくちゃいけないですね。自分が入り込みすぎちゃうと、伝わるものも伝わらなくなる気がして…。

恋愛と同じで、作品を好きすぎたり愛しすぎると気持ちのさじ加減が難しくなるものなんですね(笑)。

市川 ちょっと熱いところがあってもいいけど、全部が熱くなりすぎないよう、ほどよい人肌くらいがちょうどいいのかな(笑)。自分が気持ちよく歌えればそれでいいとならず、聴いてくださる方に心地よく届くように歌いたいたいと思います。好きすぎる楽曲に出合うと、それが一番難しくなっちゃうんです。

レコーディングではいかがでしたか?

市川 前作に比べると、お時間をいただきましたね。今回のレコーディングは、本当に全部難しかったです。頭からサビで始まる歌なので、あまり強すぎてもよくないし、弱すぎる女性に聴こえてもいけないし、その塩梅というのか。それからサビの部分にも、松井先生のこだわりを感じます。最初のサビの「一夜わずらう 恋心」という部分は、「こ(ko)、い(i)、ご(go)、こ(ko)、ろ(ro)」と母音が“o i o o o ”となっています。次のサビ「誰のせいでもないじゃない」は、「な(na)、い(i)、じゃ(ja)、な(na)、い(i)」と“a i a a i”。サビの印象をより深く残すために、母音の重ね方にまでこだわって言葉が選ばれているのがわかる。メロディーに乗せると印象に残るぶん、きれいに発音することもそうですけれど、流れるように歌うことが難しかったですね。

たいへん苦労されて、やっと仕上がった曲なのですね。

市川 それが、私があまりにもこの歌が好きすぎて(笑)、もうこれでレコーディングは終わりですと言われてから、「もう一回、歌わせてください」とディレクターさんにお願いしたくらい。大好きな曲だから、もう一回フルで歌いたかったんです。先生方も「どうぞ、どうぞ」と歌わせてくださいました。そうしたら最後は熱が入りすぎちゃって(笑)。ほとんど使えないテイクだったと思います。まだまだ歌っていたかった。それくらい好きな歌です。

「花わずらい」MV撮影時のひとコマ

 

ストレートに伝えられない未練ごころを描く「名前」

カップリングの「名前」についてはいかがですか。

市川 「花わずらい」とはまったく違う世界観で、こちらも大好きです。「名前」というタイトルが斬新ですよね。

お願い 名前を
呼んでくれますか

(「名前」歌詞より)

愛しい人には、名前で呼んでほしいと思いますよね。でも心が離れて、名前では呼ばない間柄になってしまった。それでも名前を呼んでほしいというのは、その相手に対する未練でしょう。自分の身内以外で名前を呼び捨てにしてくれる人は、人生で何人くらいいるのかな。そんなに多くはないはずで、特別な関係だからこそですよね。もしかしたら相手も、名前で呼びたいけれどもう呼べない、という気持ちを抱えているかもしれません。いろいろな方の話を聞くと、男性の方も相当引きずるようですから…(笑)。

もう気持ちがないなら「帰してください」と切実なお願いからはじまる曲ですが、この歌で由紀乃さんが好きなフレーズはどこですか。

市川 やはり「お願い 名前を 呼んでくれますか」のところですね。それと、「好きだと言わずに いられるわけがない」「あなたと離れて いられるわけがない」。”あなたがこんなに好きなんです。あなたと離れられないんです”と言えばいいところを、どれだけ遠まわしに言うのか。ここが好きですね。ストレートに気持ちを言えない女ごころ、松井先生はどうしてわかるのでしょうね。

 

一日一日をむだにせず、大切に過ごしたい

コロナ禍を経て、何か変わったことはありますか?これからやってみたいことがあれば教えてください。

市川 いまやりたいと思ったことは、いまやらなくちゃ。いま会いたいと思う人には、いま会いに行こう。そう思えるようになりました。時間が合えば、吉本新喜劇や先輩の公演に行ったり、仕事が終ったあと電車で帰って映画を観たり。おいしいお蕎麦屋さんがあると教えてもらったら、食べに行ったりもします。最近は、大判焼きを売っているかわいいおばあちゃんに出会ってしまって(笑)。月に一回、そのおばあちゃんに会いに、根津に行っています。行動だけじゃなくて、言葉もそうですね。ありがたいなと思ったら「ありがとう」、この人のことが好きだと思ったら「好き」と伝えようと思います。言わなくてもわかるというのはよくないと、思うようになりました。一日一日をむだにせず、大切に過ごしたいですね。

ありがとうございました。最後に、カラフルの読者の皆さんにメッセージをお願いします。

市川 今回の新曲「花わずらい」は、30周年を迎えられたからこそ出合えた曲だと思っています。松井五郎先生との出会いがあって、自分が歌ってみたい歌の世界観を表現できる。皆さんにお届けできるということが、すごくうれしいです。今年はいろいろなかたちで、ステージに立たせていただく機会が増えますので、ぜひこの「花わずらい」をたくさんの皆様に聴いていただきたい。そして何かを感じ取っていただけたらいいなと思います。「花わずらい」をたくさん歌って、いい一年にしていけたらと思いますので、応援をどうぞよろしくお願いします。

 

【PROFILE】市川由紀乃(いちかわゆきの) 1976年1月8日、埼玉県さいたま市出身。16歳で新聞社主催のカラオケ大会で優勝、作曲家・市川昭介氏の門下生となる。1993年、高校在学中に「おんなの祭り」でテイチクよりデビュー。1998年に現在のキングレコードに移籍し「一度でいいから」を発売。2002年に燃えつき症候群に陥り一時休業していたが、2006年10月発売の「海峡出船」で歌手へ復帰。2013年発売の「風の海峡」以降、11作連続でオリコン演歌・歌謡曲ランキング1位を獲得。2016年、2017年、2年連続で『NHK 紅白歌合戦』出場を果たす。 2018年「雨に濡れて二人」(市川由紀乃&横山剣)で第60回日本レコード大賞企画賞を受賞するなど受賞歴多数。今年デビュー30周年を迎える。

 

 


NEW RELEASE!!

2023年4月26日発売
市川由紀乃「花わずらい」

「花わずらい」
作詞:松井五郎 作曲:幸耕平 編曲:佐藤和豊
c/w「名前」
作詞:松井五郎 作曲:幸耕平 編曲:佐藤和豊
キングレコード KICM-31097 1,400円(税込)

 

CHECK!!

市川由紀乃30周年特設サイト
市川由紀乃オフィシャルサイト
市川由紀乃オフィシャルブログ
市川由紀乃Instagram


▶︎市川由紀乃が30周年のデビュー記念日にスペシャル生配信イベント「ソノサキノテマエノユキノ」を開催。
▶︎市川由紀乃が恒例の「リサイタル2022 ソノサキノユキノ」で圧巻のステージを披露
▶︎市川由紀乃が新曲の舞台となった北海道・石狩の地を訪れ市長と副市長を表敬
▶︎市川由紀乃が47回目の誕生日を迎え2023年の所信表明&プランを発表。「笑顔のある一年に」
▶︎デビュー30周年の市川由紀乃が待望の新曲「花わずらい」のビジュアルを公開!

(取材・文/夏見幸恵)

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