【Colorful Interview】竹島宏　新曲「サンタマリアの鐘」にある愛と希望。「人は誰でも幸せになれる可能性がある」

2023.03.25Interview

竹島宏の歌声で旅をする”ヨーロッパ三部作”が完結した。3月15日に発売された「サンタマリアの鐘」は、「プラハの橋」「一枚の切符」の前二作で繰り広げられてきた愛の物語の最終章。その舞台は、イタリアのフィレンツェだ。今作の中に描かれた男女二人の愛と希望。作品に向き合う竹島の思いを聞いた。

三部作を締めくくる結末を僕も楽しみに待っていました

前々作「プラハの橋」も前作「一枚の切符」も終わりは哀しい恋の物語でしたが、新曲「サンタマリアの鐘」で、思いがけないハッピーエンドになりましたね。

竹島　これまでの作品を愛してくださっていたファンの皆さんの大半から、「ハッピーエンドを願います」というご意見をいただいていましたので、「これは、ハッピーエンドじゃないと困るな」と気にはなっていましたが（笑）、僕自身はあまり物語の展開や結末を気にはしていませんでした。山田ひろし先生が、どういう詞を作ってくださるのかを楽しみに待っていました。先生は、この物語の終わりとして、ベストなエンディングを考えてくださったようです。この結末でよかったのかどうかはわかりませんが、もしかしたら「影がある人生だとしても、人は誰でも幸せになれる可能性がある」というような希望を残したかったのかなと思います。

最終章の舞台は、イタリアのフィレンツェだと予想はしていましたか？

竹島　まったく想像していませんでした。山田先生はものすごくヨーロッパに詳しくて、景色やその土地の風、文化や歴史もたくさん現地で見たり感じたりした経験がおありなので、そこを知り尽くされた上でフィレンツェにされたのだと思います。実直に生きている人たちが多い職人の町。そこで男がひとり、ひっそりと暮らしていたというイメージです。どこかで後ろめたさを感じながら、愛してしまった女性がいて。別れてしまいもう二度と会うことはないだろうと思っていた。けれども彼女は、自分の心に正直に生きていこうと思って、男性の元へ帰ってくるんです。サンタマリアの鐘の音を聴いて、「ああ、僕たちは祝福されてもいいのかな」と思う。本当なら祝福されるべき二人じゃなかったとしても、「マリア様は許してくれるかな」と…。あくまでも、僕の解釈ですけどね。

言葉の意味合いや余韻まで、味わって聴いてほしい

物語は幸せな再会ですがもの哀しいメロディーですね。歌われてみていかがでしたか？

竹島　「プラハの橋」と「一枚の切符」は、王道の歌謡曲のスタイル。どんなふうに表現すればいいか、歌う前からなんとなく見えていましたが、今作はありそうでなかったようなタイプです。でも三連のリズムのメロディーが歌いやすくて、最初からしっくりくる感じがありました。実際に歌い始めてから、僕の中でメロディーと歌詞の重なり具合に少し違和感が出てきて、山田先生に変更していただいたりもしました。一番最後の「静かに生きてゆこう」のフレーズは、リフレインするところが最初はありませんでした。それだとなんとなくさらっと終わってしまうので、作曲の幸耕平先生に「繰り返したいです」とお願いしました。「静かに生きてゆこう」という歌詞が、皆さんの心に余韻として残るようにしたいなと思ったんですよね。

ドラマチックな恋物語が、静かな余韻を残して幕を閉じるような感じでしょうか。

竹島　今作はメロディーも歌詞も「プラハの橋」や「一枚の切符」に比べて派手さがある曲ではないんです。「静かに生きてゆこう」という歌詞のとおり、控えめな歌なので、いままではなかった色合いの余韻を感じて、味わっていただきたいです。僕の歌い方も少し大人っぽく、メロディーラインと歌詞に含みを持たせるように歌っています。歌い上げ系でもなく、バラードでもなく、その中間。ただ淡々と歌うのではなく、お客様の心に響くか、印象に残るかどうかを考えて、何かを感じてもらえるような歌い方をすることを目標に、レコーディングをしました。

窓から橋を見下ろす部屋で
静かに生きてゆこう
静かに
生きてゆこう
（「サンタマリアの鐘」歌詞より）

歌詞カードを見ると、最後だけは「静かに」と「生きてゆこう」でわざわざ改行されています。細かいところにも、山田先生の意図が感じられるように思いますね。

竹島　最後の「静かに」「生きてゆこう」は、そこまでに2回出てくる「静かに生きてゆこう」と意味合いが違い、字面では「静かに」ですが、本当は「静かに」じゃなかったのかもしれません。それが、この改行に現れていたりするのかな。山田先生は作詞家として、ファンの皆さんの反応を楽しみにされているそうです。今回のレコーディングのときも、山田先生が「竹島くんのファンは知的な方が多いよね」とおっしゃっていました。僕も、しっかりと楽曲のドラマを受け止めて、ご自身の言葉で歌に対する思いを表現してくださる方が多いように思います。それは、メロディーを味わっているだけでなく、言葉の意味を感受して、詞を深く自分の中でかみ締めて聴いてくださっているということではないでしょうか。

いい歌を全国に届けに行くために、心のエネルギーを満タンに充電しておきたい

Ａタイプのカップリング曲「裏窓」は、いままでにはないセリフ入りの曲ですね。

竹島　セリフは、じつは初めはありませんでした。歌詞にもセリフは記載されていないのですが、松井先生としては、最初から用意していた言葉ではなく、”不意に出てきた言葉”という意味合いを持たせたかったのかもしれません。アレンジのデモが出来上がった段階で、「ここにセリフを入れてほしいな」と思っていたら、作曲の幸先生もちょうどそう思っていらしたみたいで、松井先生がオケ録りの日に、僕のそばで書いたセリフを朗読してくださいました。そのニュアンスで僕もセリフ入れをしましたが、「さすが、松井五郎の世界だな」と感動しましたね。松井先生の作品が好きなファンの方も多いので、皆さん大喜びされています。

Bタイプの「しあわせの片隅で」は、「サンタマリアの鐘」と少しシチュエーションが近いようにも感じられるのですが、いかがですか。

竹島　僕がTwitterに花の写真と花言葉を載せていることに合わせて、松井先生が書いてくださった作品です。「裏窓」もそうですが、カップリングもリード曲とどこか重なり合う、あまりかけ離れていない内容がいいなと思っていました。松井先生は、「サンタマリアの鐘」の歌詞をご覧になっていませんが、「プラハの橋」と「一枚の切符」の歌詞を読んでくださってその内容を踏まえて、松井先生なりに世界観を補足するような楽曲を作ってくださった。どういう立場の人が歌を聴いても、歌詞を読んでもその人の気持ちで解釈できる。これがまさに”松井五郎マジック”ですね！

この作品たちとともに、今後はどんなステージを観せていただけるか楽しみです！

竹島　今年の僕の目標は、全国の皆さんにもっと生の歌声を届けに行くことです。いい歌を届けるために体調を整えて、心のエネルギーの充電もつねに満タンな状態にしておきたいです。ヨーロッパ三部作が完結して、この「サンタマリアの鐘」はもちろん聴いていただきたのですが、「プラハの橋」「一枚の切符」もあわせて聴いていただきたい。可能な限り、三作続けてこのドラマを味わっていただくステージができたらいいなと思います。

ファンの皆さんもきっと心待ちにしていらっしゃいますね！それでは、最後にメッセージをお願いします。

竹島　僕がいつもポジティブでいられるのは、ファンの皆さんのおかげです。どんなことがあってもスーパーポジティブに（笑）ものごとを変換してくださいますし、お手紙なども基本的にすべてに目を通して、皆さんの言葉を受け止めるようにしています。皆さんのお力は本当にすごい！いつも僕の歌を愛してくださって、見守ってくださって、どうもありがとうございます。これからも、どうぞよろしくお願いします！

▶︎ついに完結！竹島宏が新曲「サンタマリアの鐘」発売記念イベント。幸せの鐘を鳴らしヒットを祈願！

【PROFILE】竹島宏（たけしまひろし）　1978年8月28日、福井県出身。大学3年生のときにカラオケ大会の審査員をしていた作詞家の久仁京介氏にスカウトされ、2002年「いいもんだいいもんだ」で歌手デビュー。2017年、デビュー15周年記念曲「月枕」がヒット、ゴールドディスクに認定される。2018年「恋町カウンター」、2019年「噂のふたり」「夢の振り子」の三作は“踊らされちゃう歌謡曲シリーズ”として話題に。2021年にデビュー20周年を迎え、記念曲「プラハの橋」を発売。『第63回日本レコード大賞』日本作曲家協会選奨を受賞し、SNSを中心に話題を集めた。

（取材・文／夏見幸恵）

NEW RELEASE!!

2023年3月15日発売
竹島宏「サンタマリアの鐘」
（Aタイプ）

「サンタマリアの鐘」
作詞：山田ひろし　作曲：幸耕平　編曲：坂本昌之
c/w「裏窓」
作詞：松井五郎　作曲：幸耕平　編曲：坂本昌之
テイチクエンタテインメント　TECA-23013　1,400円（税込）

2023年3月15日発売
竹島宏「サンタマリアの鐘」
（Bタイプ）

「サンタマリアの鐘」
作詞：山田ひろし　作曲：幸耕平　編曲：坂本昌之
c/w「しあわせの片隅で」
作詞：松井五郎　作曲：幸耕平　編曲：坂本昌之
テイチクエンタテインメント　TECA-23014　1,400円（税込）