【Colorful Interview】あなたを待ち続けてもいいですか…? タブレット純が歌う切ない女心〜新曲「百日紅(さるすべり)」〜
“夜に咲き誇る魅惑の低音ヴォイス”タブレット純が、5月11日にデビュー20周年記念曲「百日紅(さるすべり)」をリリースした。ムード歌謡界の第一人者として活躍し「ラブユー東京」や「さそり座の女」などの多くのヒット曲を遺した作曲家・中川博之氏の未発表曲に、高畠じゅん子氏が作詞した作品。2021年秋のライブで初披露し、ファンの間で発売が待ち望まれていた曲だ。発売から2カ月経ち、いまの心境を聞いた。
「“歌が好き”。ただそれだけ。それさえブレなければ、聴いてくださる人の心に響くはず」
前々作「夜のペルシャ猫」(2017年)、前作「東京パラダイス」(2020年)に続く、高畠じゅん子先生のプロデュース作品ですね。
タブレット そうですね、これで3作目になります。高畠先生のご主人で作曲家の中川博之先生が亡くなられて何年も経ちますが、未発表作品がまだたくさんストックされているんですね。その中から、高畠先生が僕に合う曲を選んでくださいました。最初はカップリング曲になっている「七色のブルース」がメインの予定でしたが、「百日紅」の方がキャッチーなメロディーで歌いやすいんじゃないかという周りの意見もあり、僕自身も「百日紅」の世界観のほうがいいなって思えてきて、そうこうしているうちにカップリングと逆になっていました。「七色のブルース」は、定番の中川作品で王道的なムード歌謡ですが、「百日紅」は中川作品としてはちょっと異質なかんじ。最初に聴いたとき、ムード歌謡というよりは、ちょっとしっとり系の演歌のように感じられました。
実際に歌われてみていかがでしたか。レコーディングは順調でしたか?
タブレット 僕はあんまりこだわらないというか…。ムード歌謡だから、こだわりすぎて歌うものでもないのかなって思うんですね。高畠先生もそんなに細かく指摘してくる方ではないし、トータルで3、4回歌っておしまい。前作の「東京パラダイス」はわりと元気よく力を込めて歌いましたが、それは本来の僕にはない部分です。今回はムード歌謡らしく力を抜いて、酔いしれたかんじで歌うように心がけたつもりです。「百日紅」は、“待つ”奥ゆかしい女性。歌詞の最後の“私の夢をおしつけちゃ だめよ あなたが困るのよ”という、あまり感情を表に出せなくて、というところは自分に近いのかもしれない。僕自身も、奥ゆかしいというわけじゃないですけれど、あまり前に出ていけないみたいなところがあるんですよね。
”ムード歌謡の貴公子”とも称されるタブレットさん。おっとりとした雰囲気がとても素敵ですが、どちらかというと引っ込み思案な性格なんですか?
タブレット 元々の性格は、そうですね。マヒナスターズに入る前は、ほとんど人前に出たことがなくて。マヒナに入ってもまったく素人でしたから、“僕がここにいていいんだろうか”って、いつも緊張どころではなかったです。それから演者としては20年やっていますが、まだまだだと思っております。子どもの頃からずっと歌が好きで、コロムビアでしたら美空ひばりさん、ちあきなおみさんの歌が自分にインプットされています。そういう方たちのすごさを、リスナーとして聴きすぎてしまったので、演者としてはいつまでも自信がつかないでいます。たとえば、小説が好きすぎて書けないような感覚に近いかもしれません。好きすぎて自分の歌が確立できないということが、悩みどころではありますね。徐々に歌の世界観ですとか、自分に合うものを選んでいくべきなのかなと思います。
タイトルの「百日紅」ですが、百日紅の花にはどんな印象がありますか?
タブレット じつはこの曲を歌うまで、百日紅がどんな花なのか知りませんでした。猿がすべりそうなくらい木の幹がすべすべしているくらいのことはわかっていましたが、調べてみたら、美しい娘が旅に出る王子を百日間待った、という伝説もあるようですね。僕は一応芸人をやっているので、曲のタイトルに“すべり”というのはどうなんだろうか。あまり縁起が良くないんじゃないかなって、最初はそんな思いがありました(笑)。
ちなみに、去年の秋のライブで初披露されて以来、ファンの皆さんから発売が待ち望まれていたそうですね。発売して2カ月経ちましたが、手ごたえはいかがですか?
タブレット そうですね。早くから歌っていて、とても評判が良かった曲です。ただ、僕は特殊というかお笑い芸人もやっているので、歌だけのステージというのはそんなにないんですよね。キャンペーンをやって毎日新曲を歌ったりしないので、この間「あ、そういえばこの曲を歌うのは、発売してから初めてだな」って気づくというような出来事がありました(笑)。最近は寄席だとか講座(カルチャーセンター「昭和歌謡講座」)のような仕事も増えていて。もともとが歌謡曲マニアで、自分の歌を歌うよりレコードをかけて歌を紹介するような仕事の方が多いんですよね。もちろん、ヒットしてくれたらいいなと思っています。
これからは、どんな活動をしていきたいと思われていますか。
タブレット 結構いろいろなことをやらせていただいていますが、根本は“歌が好き”なだけなんですよね。歌が好きで、歌に詳しいマニアだから自分でも歌えたし、CDを出すこともできました。先輩歌手の皆さんにオマージュを捧げながら、自分も同じ世界にいられることを忘れてはいけないですね。歌が好きという気持ちがブレていなければ、自分が歌う歌も聴いてくださる人の心に響くはずです。すべてが芸能界や歌謡界に対するオマージュから始まっているので、そこがブレなければこの先も活動はなんとか続けていけると思っています。
子どもの頃の憧れが現実になって、それでもなお気持ちが変わらないというのは素晴らしいことですね。
タブレット もともとマヒナスターズやグループサウンズなど、自分が生まれる前の時代の曲が好きなんですね。ラジオを聴いて古い歌が好きになって、ラジオのDJの方も尊敬して。小学生の頃から、ラジオで聴いた歌を中古レコードで買いあさっていました。小学校の卒業アルバムには“好きな芸能人はマヒナスターズ”って書いたんですよ。子どもの頃から、人とは違うのが基本。昔はそういうのを聴いていると変人扱いだったんですけれど、逆にいまは受け入れられるようになって、そのおかげでラジオでもニーズが増えました。いまも生活の中心は中古レコードで、今日も買ってきたんですよ(笑)。もともとは趣味で人と違うことをしてきたことが、仕事になったということなんですね。
これからもご活躍を楽しみにしております! 最後に、カラフル読者の皆さんにメッセージをお願いします。
タブレット いまは昭和歌謡がブームというか、やっと昭和歌謡がメジャーになってきました。僕は、自分で歌うこともそうなんですけれど、昭和歌謡の素晴らしさを自分で発信しています。カラフルの読者の皆さんにも、今後それを伝える活動ができたらいいなと思います。「百日紅」もぜひ聴いてみてください。どうぞよろしくお願いします。
ミソハギ科の落葉中高木。夏から秋にかけて、紅色またはピンク、白色の小花が咲きます。和名の「さるすべり」は、木登りが上手な猿でも滑って落ちてしまうほど幹がなめらかな様子から名づけられました。
「ヒャクジツコウ」という別名もあり、朝鮮半島の哀しい言い伝えがあります。 昔、水難を避けるため竜神への生け贄にされそうになった娘を、旅の王子が救いました。 二人は恋におち、王子は使命を果たして百日後に戻って来ると約束して、再び旅立ちます。 ところが、約束した再会の日を目前に娘は亡くなってしまったのです。百日後に戻ってきた王子が、どんなに嘆き悲しんでも娘は戻って来ることはありません。やがて、娘のお墓から1本の木が芽を出し、紅い可憐な花を咲かせました。それを見た村の人々は、その木を「百日紅(ひゃくじつこう)」と呼ぶようになったそうです。
(取材・文/夏見幸恵)
NEW RELEASE!!
2022年5月11日発売
タブレット純「百日紅(さるすべり)」
「百日紅(さるすべり)」
作詞:高畠じゅん子 作曲:中川博之 編曲:松井タツオ
c/w「七色のブルース」
作詞:高畠じゅん子 作曲:中川博之 編曲:松井タツオ
日本コロムビア COCA-17995 1,400円(税込)
CHECK!!
タブレット純日本コロムビアサイト
タブレット純オフィシャルファンクラブ「メルルーサ」
タブレット純オフィシャルブログ
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