【Colorful Interview】三丘翔太 “懐メロボーイ”の真骨頂! 新曲「釧路発5時35分根室行き」には演歌の魅力がたっぷり
三丘翔太が10月18日、新曲「釧路発5時35分根室行き」を発売した。前作「発車のベルが長すぎる」を踏襲した懐メロ路線で、懐メロボーイ・三丘翔太の真骨頂が味わえる作品だ。カップリングの「捨てられないの」は、オリジナルでは初となるムード歌謡。じつはムード歌謡も大好きだという三丘が、表題曲とはまた違う表現でファンを魅了する。演歌、懐メロ、ムード歌謡…さまざまなジャンルの歌に限りない愛情と表現力を持つ三丘の歌世界は、これからも深まり広がっていくことだろう。インタビューでは新曲のこと、大切な歌仲間のことを話してくれた。
“釧路発5時35分”、始発列車の発車時刻がメロディーにぴったり!
新曲「釧路発5時35分根室行き」も前作に続いて、昭和の懐メロの匂いがしますね。
三丘 懐メロボーイをやらせていただいていますし、前作の「発車のベルが長すぎる」で、皆さんに懐メロ路線のイメージを持っていただけたのではないかと思います。どちらも同じように三連のリズムでブルースものではありますが、今回はちょっと違って聴こえるはず。歌い方も変えていますしね。「発車のベルが…」は昭和初期の流行歌の歌い方で、新曲の「釧路発5時35分根室行き」はもう少し男らしい演歌をイメージして、コブシも入れています。同じ匂いがしつつも、前作は戦前で今作は戦後と違う懐メロなのかなと感じていただけたらうれしいですね。
JR根室本線釧路駅の始発が、本当に5時35分ですね。145分かけて、8時ちょうどに根室に着くようです。
三丘 新曲のテーマや歌詞をどうしようかという打ち合わせのときに、水森英夫先生とさくらちさと先生が実際のダイヤをいろいろ調べていましたね。釧路から始発で発つというのが、歌詞にもぴったりです。タイトルが、“長い”と言われた「発車のベルが長すぎる」以上に長くなってしまって、覚えづらい印象がありますが…(笑)。メロディーに乗せると自然に、“釧路発5時35分”と出てくるから不思議です。8時ちょうどに着いた根室で、あの子に会えるのか会えないのか、ハッピーエンドになれるのかどうか…。わからないでところで、曲が終わるんです。
続きがどうなるかは、聴く人の想像にゆだねているのですね。
三丘 相手がどうしているかわからないまま、意気込んで朝早い電車に乗って……この主人公、大丈夫なのかな?と思っちゃう(笑)。LINEやSNSのない時代でも電話くらいはできるし、前もってハガキの一枚も出さないのかな。そういう現代の感覚と違うところをいろいろ想像できるのも、演歌の魅力のひとつだと思います。ひとりで何を想って暮らすという歌詞なんかは、今でもひとりでいるだろうという主人公の思い込みですね。もし幸せにしていたら、きっとショックを受けるのに(笑)。そういう男のエゴも感じられますが、そこは前作よりも男らしいイメージで歌わせていただきました。
先ほど歌い方が前作と違うとおっしゃっていましたが、そういう点を踏まえて変えているのですね。
三丘 最初は前作と同じように、流行歌の歌い方でやってみようという話でした。レコーディングまでの1カ月くらいは、ずっとそれでレッスンしていました。ところが、オーケストラのレコーディングをした日に仮歌を入れたら、アレンジとちょっとイメージが合わないなと言われて。それで急きょ、歌入れ前日のレッスンで歌い方を変えることになったんです。コブシを入れましょう、演歌に変えましょうと急に決まって、翌日はもう本番というかんじ。1カ月練習した歌い方が染みつきすぎているので、それを取って演歌調にするのが大変でした。だから、まだまだ自分の中では納得する出来ではないですが、これからもっと歌い込んでいくつもりです。
現代では考えられないムード歌謡の世界。逆に新鮮で面白い
カップリングの「捨てられないの」は女唄で、曲調もムード歌謡ですね。
三丘 僕はじつはムード歌謡も好きなんですよね。ハッピー&ブルーさん、ロス・インディオスさん、サザンクロスさんなどの歌を生配信ではよく歌わせていただいています。はやぶさのヤマトさんもムード歌謡が大好きで、会うたびにムード歌謡談義をしているんですよ。だからといって、まさか今回カップリングに書いていただけるとは思っていなかったので、すごくうれしかったですね。この曲はレッスンを受けていないんです。デモをいただいたのがオケ撮りの直前だったから、初めて水森先生の前で歌ったのがオケ録りの日。もともとムード歌謡というものが、自分の中にあったから歌えたのかもしれないですね。
こちらの曲も、主人公は昭和の女性というイメージがありますね。
三丘 “捨てられないの あなたがすべて”と、男がいなくなったら生きていけないと書かれています。これは、昭和の女性のイメージですよね。しっかり自立されているいまどきの女性だったら、“あなたが捨てるなら、私は私で生きていくわと言うんじゃないでしょうか。だいたい“捨てる”なんてモノみたいですから、あまり日常では使わないですよね(笑)。でも“振った“振られたじゃなくて、“捨てた”“”と歌うのがムード歌謡。ドラマチックに聴こえるし、一途に恋して愛し合っていたという思いも見えてきますね。
あなたの嘘には 夢がある
芯から泣かせる 夢がある
(「捨てられないの」歌詞より)
この女性は、別れた後も目が覚めていない。これは“沼”ですね。遠い思い出が“七色(なないろ)十色(といろ)”に見えるくらい、深くハマっています。
男性に捨てられてから、猫を“ヒロシ”と呼んでかわいがっていますというのも、ムード歌謡独特の世界観がありますね。
三丘 このヒロシも、頼りない男ですよね。きっとヒモみたいな男で、二人して堕ちていくかんじだったんでしょう。これじゃいけないと思って、ヒロシは別れていったのかな。勝手な想像ですけど(笑)。ど直球のムード歌謡は、主人公の女性がみんな同じ人かと思えるほど、報われない女が多いですよね。“いつまでたっても ダメなわたしネ”とか“バカ あなたほんとに意気地なし”とか、言葉のチョイスに“バカ”や“ダメ”ははずせない。“捨てた”もそうですが、何でこの言葉を選んだのだろう、いまの感覚では考えられないなというところが、逆に新鮮で面白いですね。そんなムード歌謡の楽曲に新たに加わるのが、「捨てられないの」です(笑)。
楽しい仲間と一緒に、演歌を僕らの世代で盛り上げていきたい
8月に開催された真田ナオキさんとのコラボイベントが大好評でしたね。今後も開催される予定はありますか?
三丘 タイトルが『三真フェスはじめました』ですから、これはまだ前哨戦、プレフェスなんです。真田さんは今後、いろいろな歌い手さんに来ていただいて、盛り上がるフェスにしたいと。僕はそれに従うだけで、歌を作れと言われたら作ります(笑)。あのように企画してもらわないと、自分ではなかなか曲を作ろうとは思いません。真田さんと歌交換をして、僕が「恵比寿」を歌い、真田さんが「よこはま埠頭」を歌ってくれたのですが、すごく良くて僕の歌じゃないみたいでした。真田さんとこうやって、楽しみながら仕事をさせていただけることには、非常にご縁を感じています。『三真フェスはじめました』はJOYSOUNDの「みるハコ」で、11月の初旬から1カ月くらい配信されます。こちらもぜひ観てください!
タイプの違うお二人ですが、楽しみながらもお互いにリスペクトし合っていることが感じられます。
三丘 まったくですよ! 学生時代だったら同じクラスになっても、違うグループにいますよね。でもきっと、仲は悪くないと思う。僕は学生時代から、明るめの陽キャに好かれる傾向があります。無茶ブリもありますけど(笑)、ありがたいですよね。真田さんのことは水森先生も“本当にありがたいな”“いいヤツだな”とおっしゃっています。先日は水森先生のお宅へ行って、青山新くんと一緒に食事をしました。彼も”演歌第七世代”として、頑張っているなと思います。演歌は年配のイメージが強い世界ですが、同世代や僕よりもっと若い人の中にも同じ志を持った人がいるということが、とても心強いです。これから演歌の世界を、僕らの世代でもっと盛り上げていきたいですね。
TBS『マツコの知らない世界』に、”365日蝶ネクタイ生活を送る演歌歌手”として出演されたこともある三丘さん(6月20日放送「蝶ネクタイの世界」)。取材の日はたまたま、こんなにたくさんの蝶ネクタイを持っていらっしゃいました。ヨークシャーテリア柄の蝶ネクタイは、うつみ宮土理さんからいただいたもの。派手なオレンジ系は、下北沢の古着屋で見つけて購入したもの。コレクションは全部で350本くらいだそうです!
(取材・文/夏見幸恵)
NEW RELEASE!!
2023年10月18日発売
三丘翔太「釧路発5時35分根室行き」
「釧路発5時35分根室行き」」
作詞:さくらちさと 作曲:水森英夫 編曲:竹内弘一
c/w「捨てられないの」
作作詞:さくらちさと 作曲:水森英夫 編曲:竹内弘一
テイチクエンタテインメント TECA-23065 1,500円(税込)
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