【カラフル現場放浪記】音に咲く花、兄弟のハーモニー 〜 竜徹日記ワンマンライブ〜

5月10日、神奈川・横浜のライブハウス「BAYSIS」で、竜徹日記のワンマンライブ『竜徹酒場 〜いつの間にかいたけどアボカドって結局何?〜』が開催された。竜徹日記は、2016年に結成された木村竜蔵さんと木村徹二さん、実の兄弟によるポップスデュオ。兄弟ならではの息の合ったハーモニーで知られる二人。この日のステージも、その魅力を存分に体感できるひと時となった。
半年ぶりの再集結!笑いと感動の3時間
オープニングから3曲をノンストップで届けると、トークでは次々に飛び出してくる二人の小ネタに、会場は絶えず笑いが起こる。
バンドスタイルの竜徹日記のワンマンライブは、毎年2回。今回は昨年末以来約半年ぶりの再集結ということもあり、竜徹の二人とバンドメンバーの軽妙なトークが開始早々繰り広げられた。付き合いも長く気心の知れた間柄から滲み出る、自由さと温かい空気に終始心をくすぐられる。

木村竜蔵

木村徹二
翌日は母の日ということもあり、「おふくろは車で言うと木村家の“エンジン”。親父は外側のボディで、妹がガソリン。まぁ、僕とあなた(竜蔵)でワイパーですね(笑)」と徹二さん。父と長年連れ添ってきた母の偉大さを、笑いを交えながら語り、ほっこりした雰囲気で会場を包み込んだ。

このライブではメンバーがテーマに沿った衣装を着てくることが恒例となっている。今回は特にテーマを設けず、各自が思い出やエピソードのある服装で参加。竜蔵さんは、中学校入学時のオリエンテーションで着ていた尾崎豊の(受験合格のご褒美として購入)限定販売の当時の思い出が詰まっているTシャツ。徹二さんは父・鳥羽一郎さんが40年ほど前に「山陽道」のレコードジャケットで来ていた衣装。ファンが何十年も大切に保管していたものを奇跡的に入手、デビュー曲「二代目」特別盤のジャケットで使用したレア物だ
そして、中でも爆笑をさらったのは、徹二さんによる「父のiPhone全データ消失事件」。最新機種への変更のデータ移行を手伝った際、誤ってすべてのデータを消失してしまったというエピソードは、どうしようもなくなり兄・竜蔵さんに助けを求め最終的にはことなきを得たのだが……。父親の大切な写真や音楽を“命がけ”で取り戻そうとする、家族を巻き込み大奮闘した復旧作業をリアルに語ることで、笑いと同時に愛や臨場感あふれる一幕となった。
まるでネタの尽きないバラエティー番組のようなエピソード満載のトークタイムはもちろんだが、やはり竜徹日記の一番の魅力はライブだ。耳の奥にじんわりと広がっていくメロディーと、兄弟ならではの本当に自然な声の重なり。ただ、歌が上手い、ハーモニーが美しいという言葉では足りない。
演歌歌手としての徹二さんのコンサート共演シーンでも何度も披露されている「花が笑う」や「めぐりめぐる」。竜蔵さんのピアノの演奏と徹二さんの繊細だけれど芯のある歌声に、何度も聞き入ってしまう。「雨の季節の晴れた日に」は、しっとりと始まり徐々に強さを増していく二人に、会場の空気が一変。詞に込められた希望や感情の一つひとつが、声と音に乗って観客の心の奥に届いた。
そしてラスト、アンコールでは竜蔵さんが作ったあの名曲! 原田波人さんへ楽曲提供した「火の鳥」を、徹二さんが即興で歌い出すというまさかの展開が。ピアノと歌だけで生まれた、数分間の奇跡。あの場にいなければ体感することのできない瞬間に、大きな歓声と拍手が生まれ一気に会場のボルテージが上がった。そして、その盛り上がりのまま、ライブはクライマックスを迎えた。
兄弟の信頼と絆、そして二人から紡がれる音に咲く花は、派手さはなくとも静かに、聴く人の心の中に大きく開く。会場にいたすべての人たちとその瞬間を見届けた、楽しくも心に響く忘れられない夜となった。
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