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【Colorful Interview】福田こうへい 小さな巨人の心意気〜お客様を元気にする“オロナミンCボイス” 〜

福田こうへいが11月2日、新曲「北風よ・・・」をリリースする。股旅演歌を現代風にアレンジした楽曲で、11月11日から大阪・新歌舞伎座で行われる『福田こうへい特別公演・望郷 風の流れ旅』の劇中歌として舞台を彩る一曲だ。
コンサートに来場したお客様一人ひとりを「来たときよりも元気にして帰したい」という思いを込めて、毎回全力で歌ってきた福田も今年でデビュー11年目を迎えた。歌手として、男としても脂の乗り切った福田の、歌手としての矜恃とは。変わらぬ思いを聞いた。

 

鍛え上げたのどで、心に響く歌を、魂を込めて歌い続けたい

 

福田こうへいは、“元気の源”のような存在だ。類まれな歌唱力とユーモアのある東北なまりのトークが、来場したお客様を一瞬にして虜にする。高齢の観客は来たときよりも背筋がピンと伸び、かくしゃくと帰っていくので、コンサート会場では“杖”の忘れ物が最も多いと聞く。

「一番多いときで25、6本忘れてあったかな。『あ、忘れた』なんて、走って取りに戻って来るんだよ。走れるんだったら、もう杖はいらねえよなあ(笑)」

地元では有名な民謡歌手の父を持ちながらも、福田が民謡を歌い始めたのは23歳とかなり遅い。父親とケンカをしたあと、「親父をビックリさせてやろう」と思って、ろくに練習もせずに民謡大会に出場した。すると、あっさりと入賞。そのことがきっかけだった。口さがない人から「お父さんが大会の役員で民謡歌手だから、それで賞をもらったんでねえの」と疑われたことが悔しくて、「よし、優勝するまで出続けてやる」と決めた。

誰の手ほどきを受けていなくても、幼いころから民謡を聴いて育った福田の耳は肥えていた。わずか2年後には優勝を果たし、それから数々の民謡大会に出場するようになった。

「民謡をやるには、まずは“のどを作れ”と、親父から言われました。いろいろ覚えるよりも、まずはのどだと。これだけしか教えてくれなかったね。どういうことかというと、騒音にかき消されずに相手にストレートに届く声を出せる声帯を作れということなの。やみくもに大声を出して、のどに負担をかかっているのはダメ声。声量に頼らず、芯の通ったよく響く声さえ出せるようになれば、鬼に金棒です」

民謡歌手になると決めてからの福田は、トラクターに乗ったり草刈り機を操縦しながら、エンジンのうるさい音の中でもしっかり聴こえる声を出せるよういつも練習していた。

コンサートで熱唱する福田。今年最後のコンサートは、12月7日に東京・浅草公会堂で開催。来年は1月14日、故郷・岩手県北上市の北上市文化交流センターさくらホールからスタートする予定だ。

 

新曲「北風よ・・・」、そしてお芝居。いまは新歌舞伎座の公演に全集中

 

11月11日から大阪の新歌舞伎座で、5年ぶりの座長公演が開催される。福田にとって、初めての本格的な時代劇「望郷 風の流れ旅」は、昔五木ひろしが演じた芝居の台本を、福田に合わせて東北バージョンに書き換えた作品。

11月11日より大阪・新歌舞伎座で「福田こうへい特別公演」を上演

そして、公演に先立って11月2日にリリースされる新曲「北風よ・・・」は、この公演の劇中歌として作られた。「メロディーは現代風なんだけど、歌詞の“芒を噛んで”というところには、昭和を感じるんですよね」と話す。また、カップリングの「十六夜鴉(いざよいがらす)」にも、歌詞に芝居の舞台となる福田に縁の深い東北の岩手富士や、奥の細道、奥州路が登場する。

「レコーディングには、今回に限らずいつもある程度聴いて覚えたら、完成させないで行きます。すっかり作り上げて行っちゃうと、作品が固くなっちゃうから。何パターンか録ってみて、『ここはこういう歌い方の方がいいよね』『このメロディーは、こうしたらどうかな』と、だいぶ変わるからね。私の歌に合わせて譜面を書き換えてもらうこともありますし、その場で作りながら完成させます」

今作は2曲とも、1時間半から2時間くらいで録り終えた。作家の先生方や担当ディレクターも福田の好きなように歌わせてくれるので、悩んだり苦労したりすることもなかったという。

「いまは新歌舞伎座だけに全集中。芝居の台詞は、立ち稽古で体を使って覚えていくしかないんです。相手があって、動きでしゃべるものだから。長い台詞以外は自分のところだけ勝手に覚えてもダメ。台本はあまり見ないですね。立ち稽古で“次はこのセリフだっけかな”なんて思い出します。なるようにしかならないのよ(笑)」

まだ芝居に慣れていないうちからアドリブを入れると、他の演者さんに失礼になる。小さな子役を迷わせないようにしてあげたいと、共演者にも優しい気遣いを見せる。
そして、やはり福田は「新曲のPRを考えるよりも、一度来てくれた人がまた来てくれるよう、一度も来たことがなかった人も来るようになってほしい。演歌歌手がなかなか来てくれないような小さな会場でも歌えたらいいな」と、お客様のために歌い続ける意欲を、いつも第一に持ち続けている。

「私にとっては、毎回毎回が力試し。来てくれたお客さんが、最高で一番厳しい審査員の先生。『一回聴いてみたけど、もういいや』って言われないよう、絶対に力は抜けないですね。お年寄りは元気にして帰したい。どん帳が上がる前、前奏が始まると自然にスイッチが入ります」

もうほとんど歩かなくなった老婦人が、「福田こうへいのコンサートだったら何としても行きたい」と言ってくれる。介助のための付き添いで来た家族までが、福田の歌に惹きつけられる。気乗りしないけど、ただでチケットをもらったから来てみたという人が「次は私がチケットを買うから、また一緒に来ましょうね」と言ってくれる。事務所に届く手紙には「私の友だちがあなたにめちゃくちゃハマっています。彼女をここまで狂わせた人間はどんな人よって興味半分で観に行ったら、私までハマってしまいました(笑)」と書かれたものもある。

福田の魅力は底知れない。

 

これまでの10年、これからの10年。私は小さな巨人です(笑)

 

10月25日にデビュー11周年目を迎えた福田。36歳でデビューしてからの10年間を、「おかげさまで、まるで20年分くらいの忙しさだった」と振り返る。

「10年間、よくもったなと思いますね。健康は別に体調が悪くなったりはなかった。いや、でも福島で血を吐いたっけなあ(※)。あのときはスケジュールを詰め込みすぎ。2回公演を2連ちゃんでやって、1日空けてまた2連ちゃん。疲れがあったのかなあ」
(※2018年11月、胃と食道の接合部が裂けて吐血、入院治療を行なった)

意外なことに、歌手デビューする前の福田は、職場の同僚たちとカラオケに行ってもMr.Childrenの曲などポップスばかり歌っていた。当時の仲間には「なんで民謡歌手になったの」と驚かれていると話す。

「いまでも地元に帰れば一緒に飲んだりゴルフをしたりするんだけど、『まさか歌手になるとは思わねがったなあ』と、よく言われます。いまだに同級生で『あんたと同姓同名の演歌歌手がいるんだよ』って言うヤツがいるの。いかにテレビを観ていないか。“福田こうへい”という歌手、私以外に誰がいるんでしょうね(笑)」

無邪気に、少年のように笑う。そんな福田に、この先の抱負をたずねると「これからも、ここ(ハート)に響く歌をちゃんと歌っていきたい」と、自分の胸をたたいてみせた。

「今年コンサートに来てくださった人が、来年も同じように来てくださればそれでいい。考えるのはそのことだけです。ああしたいな、こうしたいなというのは、自分の欲だから。そうじゃなくて、私を選んで来てくださったお客様を、とにかく喜ばせて帰すことを大事にしたい」

元気の源、“オロナミンCボイス“。小さな巨人は、大きな心意気を胸に、今日もステージに立つ。

 

🌈アフタートーク🌈

福田こうへいのヒ・ミ・ツ!

福田 俺の携帯電話は、まだ“ガラケー”です。スマホは視力が悪くなるっていうけど、事務所から預けられたスマホで動画などを観ていたら、さすがの私も最近は視力が落ちてきて・・・いまは2.0かな。昔は2.5とか普通にありましたから! 視力検査で、「いや~、本当にどこまでも見えていますね」って驚かれてねぇ(笑)。
子どものころは、よく猟に連れて行かれたの。鹿を山のふもとから頂上に追い込んでいくのね。俺は遠くから鹿を探して、「あそこにいる」って教えてやるの。山育ちの人間は、遠くまでよ~く見えるんだよ!(笑)

 

【PROFILE】福田こうへい(ふくだこうへい) 1976年9月21日、岩手県盛岡市生まれ。地元で有名な民謡歌手であった福田岩月を父に持つ。23歳と民謡を始めたのは遅かったが、父の死をきっかけに民謡歌手の道へ。2012年「日本民謡フェスティバル」でグランプリ獲得。同年10月「南部蝉しぐれ」で演歌歌手としてデビューを果たす。2013年「輝く!日本レコード大賞」新人賞受賞、第64回NHK紅白歌合戦に初出場。シングル「峠越え」アルバム「響」がゴールドディスク賞、「南部蝉しぐれ」でロングヒット賞を受賞するなど、ヒット曲や受賞歴は多数。2021年デビュー10周年を迎えた。実力のある歌唱と気さくな人柄が大人気。特技は山菜採り。

(取材・文/夏見幸恵)

 

NEW RELEASE!!

2022年11月2日発売
福田こうへい「北風よ・・・」

「北風よ・・・」
作詞:万城たかし 作曲:弦 哲也 編曲:野村 豊
c/w「十六夜鴉(いざよいがらす)」
作詞:万城たかし 作曲:宮下健治 編曲:野村 豊
キングレコード KICM-31082 1,400円(税込)

 
 

CHECK!!

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