【COLORful Interview】三山ひろし 京都が舞台の新曲「祇園闇桜」で現代演歌の新境地を

6月4日にリリースされた、2025年の第2弾シングル「祇園闇桜」。三山ひろしにとっては初めての、京都を舞台とした作品だ。いままでにないほど美しい女性像や情景、そして“ハイブリッド型”のメロディーを三山らしい解釈で歌った完成度の高い一曲。三山の新たな一面を見せている。
フォークソングから演歌へと変わっていく“ハイブリッド型”の挑戦状
新曲の「祇園闇桜」は、前作に引き続き女唄ですね。
三山 今回は女性の艶っぽさや美しさを、存分に感じていただけるような作品です。「恋…情念」は、どちらかといいますと激しい恋を描いていますが、「祇園闇桜」は奥ゆかしさというか…。表立った感情の表れよりも、一歩後ろに下がった感じの気持ちを歌っているんですね。作詞された石原信一先生は「男の流儀」という作品では、武骨な男のダンディズムを書いてくださいましたが、それとは180度違う世界を見事に描いてくださった。僕はこの詞を読んだとき、本当にきれいだなと思いましたね。僕自身、京都を舞台にした作品が初めてなんですけれども、京都に対して持っているイメージと、まさしくピタッとはまる作品、ザ・艶歌という感じがします。
京都の作品が初めてというのは意外です。それくらい、さまざまなタイプの曲を歌っていらっしゃいますよね。
三山 ここのところ作曲の弦哲也先生から、本当にバラエティーに富んだ作品を頂戴しています。弦先生はいつも「こういう歌はどうかなあ。三山くんに挑戦状を出してみた」なんて冗談でおっしゃったりするんですけど(笑)。まさにそういう感じで、自分の引き出しをどんどん出して、皆さんに見ていただいてるような気持ちです。僕も勉強になりますし、ひとりのアーティストとして考えたときに面白みがありますよね。たとえば“三山ひろしといえば女唄だね”といようなカテゴリーにはめられず、マルチジャンルな歌い手として聴いていただける。いろいろな作品に応えていけるよう、常にブラッシュアップをしていかなきゃいけないなと思っています。
「祇園闇桜」が弦先生からの挑戦状だと思われたのは、どんなところですか?
三山 この作品のいままでになかったところは、出だしがフォークソングなんです。そこから後が演歌になっている“ハイブリッド型”の作品だと、僕は思っています。
水面(みなも)流れる 花びらは
ゆれて明日を さがすのよ
(「祇園闇桜」より)
このあたりのメロディーは、フォークソングタッチですね。だからこぶしを回していない、ビブラートも入れてない、しゃくってない。歌うというよりも、着物姿の女性が丸窓の端に座って川を眺めながらつぶやいてるような雰囲気を出しています。そこから演歌に変わっていって、“祇園白川”のこぶしを回すあたりとか、最後の“闇桜 ”のすごく低いところは艶歌の極みです。いきなり変わりすぎても変だし、だんだん演歌色を濃くする微妙なニュアンスを“三山に歌えるかな?”と試されている。そういう挑戦状じゃないかなと思いました。
「素晴らしい、匂い経つような色気だ」と言っていただけたことがうれしいです
“いくら化粧を なおしても すぐに涙が 邪魔をする”とは、本当に切ない歌詞ですね。
三山 そうですね。だから女性の諦めともつかない、幸せでも不幸せでもない揺れる思いを、軽いタッチの声色で歌ってみたんです。“十六夜月”という言葉が入っていて、これは迷いの風景なんですよね。おぼろげで儚い十六夜月と、物思いの中でまどろんでいる様子が重なるわけです。これだけ美しい女性象や風景がこんなに散りばめられている歌詞って、他にはちょっとないですよね。男性の石原先生が、ここまで艶っぽく書かれているというのもすごいなと思います。本当に素敵な詞をいただきました。
その美しい歌詞に、弦先生がハイブリッドなメロディーを付けてくださったということですね。
三山 やっぱり弦先生はすごいですね。ああいうメロディーラインになるということは、心の中で描いている世界が石原先生と一緒だったんでしょうね。京都に対して、そして女性や艶っぽさに対しての思っていたことが見事にリンクしていた。そうじゃないと、あのメロディーにはならないと思うんですよ。詞にハマるメロディーがバチっとできているので、聴いた時にいい意味でゾワッとしました。これに自分がどんな歌を乗せていくのか、そこを試されているなあと思うんです。三山ひろしの力を見せてくれと言わんばかりの作品に、自分も磨かれているじゃないかなと。
石原先生と弦先生がお互いに、“思いがリンクしていたね”と話されることはないと思います。三山さんの歌を聴いたときに、“狙い通りにできた”と思われるでしょうね。
三山 今回は実際のところ、別途レコーディングはしていないんですよ。いわゆるオケ録りの時に、本番が録れちゃいました。“こういう世界だろうな”と自分の思っている通りに歌ったら、それでOKだったんですね。石原先生から「これはもう最高だよ。本当に素晴らしい、匂い立つような色気だ」と言っていただきました。それがとってもうれしくて安心したのと同時に、先生方もやっぱり僕の思い描いてた女性像と同じ女性を見てたんだなと思えて、そのこともうれしかったです。
作家と歌い手が世界観を共有できた幸せな瞬間の作品
前回のインタビュー(※)で、「歌だけでなく、どんな楽器が鳴っているかも注意して聴いてほしい」とおっしゃっていました。「祇園闇桜」も素晴らしい演奏ですね。(※COLORful VOL.3に掲載されたSpecial INTERVIEW)
三山 味わい深いですよね。 細かいところまで噛み締めて聴いていると、「祇園闇桜」もなかなか面白い編曲だなとわかります。お琴や鼓、笛の音などが効果的に入っていて、その音色が運んでくる情景がある。それを理解すると、いい歌を歌えると思うんですよね。毎回レコーディングの時は先生方が集まって、僕も一緒に雑談なんかをして、その後ミュージシャンの皆さんが音合わせをします。「じゃあそろそろ行きますか」と言われて、「録ります」とワンツーで一斉に音が出た時のインパクトは、僕らにしか味わえない瞬間だと思います。イメージとしては、花が開くみたいに広がっていく。その瞬間が、幸せだなと思います。やっぱりみんなの心がひとつになっていないと、いいものはできないですね。
世界観を共有できたということですね。そういうことは、やはり稀なのでしょうか?
三山 あまりないと思いますね。歌を録るのは別日が基本ですから。仮歌の日に録れちゃったのはめずらしいし、“他のバリエーションがほしいのでもうワンテイクお願いします”みたいなのもなかった。作詞、作曲、編曲の先生、そしてディレクター、歌手。みんなの考えが、まるでパズルみたいにパチッとすべて合った瞬間が、この「祇園闇桜」になってるんです。満場一致の拍手をもらっている感覚ですから、本当に気持ちいいです。すごく幸せですね。もちろん聴いてくださる方がどう感じるかというのが大事なところで、これをそのまま皆さんにお届けすることができたらいいなと思います。

【PROFILE】三山ひろし(みやまひろし) 1980年9月17日、高知県南国市出身。2007年『日本クラウン創立45周年新人オーディション決勝大会』で準グランプリ受賞。2009年6月発売のデビュー曲「人恋酒場」が、2010年ゴールドディスクに認 定される。それ以降ヒット曲多数、『輝く!日本レコード大賞』『日本有線大賞』などでの受賞歴多数 。2015年『第66回 NHK紅白歌合戦』から連続で10年間出場中。2024年『第75回 NHK紅白歌合戦』では 「連続でけん玉をキャッチした人の最も長い列」128人でギネス世界記録を達成
(取材・文/夏見幸恵)
INFORMATION
未来を担う演歌歌手が挑む、新たな『1PPO(いっぽ)~歌と芝居の贈り物』
日時:
①8月21日(木) 開演15:00
②8月22日(金) 開演11:00
③8月22日(金) 開演16:00
会場:東京・狛江エコルマホール
出演:三山ひろし、辰巳ゆうと、藤井香愛、津吹みゆ、彩青、木村徹二
料金:8,000円(全席指定・税込)※未就学児入場不可

「私たちの演歌・歌謡界を盛り上げるための第一歩であったり、それぞれの自分たちのスキルを上げる第一歩になればなという、そのタイトル通りのイベントです。一部のお芝居は人情喜劇で、一人ひとりのキャラクターが全部違います。みんな素材がよくて違ったスキルを持っているのに、そのよさを引き出して目立つところに置いていただかないことには、華やいで見えないわけです。それを一緒のところにギュッと集めて皆さんに観ていただきまして、演歌・歌謡界の底上げを図りたいというのが『IPPO』の狙いです。これから先の演歌・歌謡界の間口がもっと広くなって、わいわい賑わってくるようにしたいと思っています! このイベントが、その第一歩です」(三山)
NEW RELEASE!!
2025年6月4日発売
三山ひろし「祇園闇桜」
「祇園闇桜」
作詞:石原信一 作曲:弦哲也 編曲:南郷達也
c/w「青春」
作詞:前田たかひろ 作・編曲:馬飼野俊一
日本クラウン CRCN-8753 1,500円(税込)
各配信サイトはこちら▶︎ https://lnk.to/sakeakari
CHECK!!
2025年5月14日発売
三山ひろし『大好きな星野哲郎先生の作品を唄わせていただきます!~生誕100年・星野哲郎作品集~』
【収録曲】
M1 男はつらいよ
M2 みだれ髪
M3 兄弟船
M4 雪椿
M5 アンコ椿は恋の花
M6 昔の名前で出ています
M7 なみだ船
M8 女の港
M9 花はおそかった
M10 いっぽんどっこの唄
M11 おんなの宿
M12 仁義
M13 自動車ショー歌
M14 城ヶ崎ブルース
M15 夫婦坂
M16 三百六十五歩のマーチ
日本クラウン CRCN-41524 3,300円(税込)
各配信サイトはこちら▶︎ https://lnk.to/hoshinotetsurosakuhinsyu
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