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【COLORful Interview】美里里美 明治に生きた女流画家の波乱に満ちた恋を壮大なスケールで歌う

デビュー7年目を迎えた美里里美が6月18日、新曲「女…序の舞」をリリースした。宮尾登美子の小説「序の舞」の主人公である女流画家・上村松園をモデルにした、美里にとっては初の文芸作品だ。カップリングの「我が人生」は、メジャーデビュー前に師匠である清水アキラが書いてくれた思い入れのある一曲。歌にかけるひたむきな情熱と、確かな歌唱力が結実した珠玉の一枚が完成した。

 

 

“過ぎてしまえば 泡沫の”…波乱の人生を振り返るところが好き

新曲「女…序の舞」は、明治時代に美人画を描いた女流画家・上村松園をモデルに創作された宮尾登美子氏の小説「序の舞」を題材にした、スケールの大きな作品ですね。

美里 はい。ディレクターさんが若いころにこの本を読んで、これをどうにか歌にできないか、誰か歌える歌手がいないかと、ずっと考えていたんだそうです。そんな中で、美里里美もデビューしてもうすぐ7年、そろそろこれを歌えるぐらいの実力もついてきたんじゃないかと、名前を挙げていただきました。私にとっては初めての文芸作品。そしてこれまでは「夕月波止場」「雨の海峡」「女ひとりの日本海」と海の歌を歌わせていただいていましたが、初めて“海もの”じゃないんですね(笑)。女の情念が垣間見えるような曲となっていますが、小説を読んで、そして小説を映画化(※)したものを観て、イメージをいっそう膨らませて歌いました。だからこれまでの三作よりも表現しやすかったなと思っています。
※1984年公開の東映映画『序の舞』名取裕子主演・中島貞夫監督

原作の小説や映画をご覧になって、美里さんの心に残ったシーンはありますか?

美里 映画は松園さんが未婚の母になったところで終わっていますが、小説はその後も書かれていて、私は師匠の死に際に会いに行ったところを読んで大号泣しました。師匠の家族からは邪険にされて、それでも最後に枕元に通してもらえた。そこで師匠が、“自分の息子として認知してやれなかった代わりに”と、息子に雅号を授けたんです。「松園」ももちろん師匠にいただいた雅号でしたし、息子は孫弟子のようなもの。最初で最後の贈り物として「松篁」という雅号を、お父様からもらえたんです。松園さんは美人画しか描いていませんが、息子の上村松篁さんも孫の上村淳之さんも花鳥風月を描く画家になりました。しっかりと師匠の血を受け継がれたんですね。

円香乃先生も実際にこの本を読んで作詞されたと聞きましたが、円先生から詞に関しておっしゃられたことはありますか?

美里 細かいことは、とくにありませんでした。ただ松園さんが亡くなるころのことを、「小説は、あそこが良かったね」とずっと言っておられました。私は、歌詞の最後“過ぎてしまえば 泡沫(うたかた)の”が、すごく好きです。ここは松園さんが晩年に、“いろいろなことがあった波乱に満ちた人生だったな”と振り返っているところを想像して歌っています。円先生はディレクターさんから、「本を読み切るまでは、絶対に詞を書かないでください」と言われたそうで、全部読んでくださったんです。私は近所の図書館で借りて読みました。40年前の本なので、もう本屋さんに売っていなくて。738ページもある大作なので、読み終わる前に返却日になっちゃって、何回も借りたり返したりを繰り返しました(笑)。

イメージしたどおりに歌えましたか?

美里 円先生が先に詞を書いてくださって、師匠の清水アキラさんが曲をつけてくださったんですね。これまでの三作は“こうして歌いなさい”、“ここはこうだよな”と、師匠からがいろいろ言われていましたが、今回は“好きなように歌ってみなさい”、“美里がどういうふうに歌うか聴かせてちょうだい”とほぼアドバイスなしです。ディレクターさんと師匠から、最後の“女 序の舞 華の舞”のところだけは、ちょっと民謡の節を使って歌ってみてほしいと言われたので、自分の引き出しの中にあるものをフル回転させて歌い上げました。

 

たくさんの出会いと別れがあって人生はステップアップしていくもの

カップリングの「我が人生」はデビュー前から歌っていらして、ファンの皆さんからCD化を待ち望まれていた曲だとお聞きしました。

美里 デビュー前に、私の地元の宮城県富谷市でコンサートを開催させていただけることになったとき、師匠が作ってくださいました。“来てくださる皆さんに、なんかお土産あった方がいいんじゃないか”とおっしゃって。それがもう7年ぐらい前になりますが、それからずっと歌い続けていろいろな方に聴いていただいています。“CDにならないの?”とか“歌いたいんだけど、カラオケ入らないの? ”というお声をいただいていて、ファンの皆様と私の念願が叶って、やっとCDにすることができました。

初めていただいたオリジナル曲ということですね。最初の頃から歌い方もだいぶ変わっていますか?

美里 変わっています。全然違うと思います。デビュー前に、初めてレコーディングを経験したのもこの曲でした。 レコーディングの前日、師匠の自宅に呼ばれて練習したとき「お前、なんでできないんだ」と、泣くぐらいダメ出しをされたんです。それでも師匠の言うことが理解できず、「もういい、とにかく明日が本番だから早く帰って寝ろ」と言われて家に帰りました。そして迎えた当日は、“もしかして師匠はこういうことを言ったのかな”と思い、リズムに乗って歌うようにしてみたら、「あれ、どうした?うまくなってるじゃないか」と、案外すらっと録れた覚えがあります。

初めてのレコーディングで厳しい経験をされましたね。そのときたくさん注意されたことも、いまだったら腑に落ちますか?

美里 はい。この7年間、いろいろな経験をさせていただきました。たくさんの人と出会って別れて。もう見に来られなくなった方もいれば、亡くなられて本当に会えなくなった方もいます。別れはつらいですけれど、それがあって人間としてステップアップしていくのかもしれません。私も30歳。この歌がより響く年齢になったのかなと思ったりもします。それと、やっぱり長く一緒にいるって大事だなと思います。師匠が出会ったばかりのころのことを「まったく心を見せてくれない、ちょっと壁があるようなのが本当に煩わしかった」と、よく言っています。私は東北人なので、スッと人の心に入っていけないところがありました。いまは全然違いますよ(笑)。

今年は上村松園 生誕150周年ですので、「女…序の舞」もたくさんの方に聴いていただけるといいですね。最後にカラフル読者の皆さんにメッセージをお願いします。

美里 カラフルさんをご覧の皆様、上から読んでも下から読んでも美里里美と申します。3年ぶり4作目のシングル「女…序の舞」を発売させていただきました。今回は美里里美初の文芸作品で、テイチクの先輩の西崎みどりさんに踊りをつけていただきました。師匠は“美里里美にしか歌えない歌”として作ってくださっています。歌いどころがたくさんありますので、皆様にも覚えて歌っていただけたらと思います。 ぜひ一緒に扇を回して踊りましょう。どうぞよろしくお願いします!

【PROFILE】美里里美(みさとさとみ) 1995年6月21日、宮城県出身。幼いころから祖母の影響で民謡に親しむ。2006年「さんさ時雨 全国大会 ジュニアの部」で優勝。その後も『NHK 東北民謡コンクール県大会』で優勝するなど、東北地区を中心に民謡大会での受賞歴多数。2017年、歌手を目指して上京し清水アキラに師事する。2019年5月、“清水アキラの秘蔵っ子”として「夕月波止場」でメジャーデビューを果たした。明るく親しみやすいキャラクターと情感あふれる確かな歌唱力で人気を集めている。趣味はカラオケ、お菓子作り、三味線、尺八

(取材・文/夏見幸恵)

 

NEW RELEASE!!

2025年6月18日発売
美里里美「女…序の舞」

「女…序の舞」
作詞:円香乃 作曲:清水アキラ 編曲:伊戸のりお
c/w「我が人生」
作詞・作曲:清水アキラ 編曲:小林俊太郎
テイチクエンタテインメント TECA-25026 1,550円(税込)

 

CHECK!!

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美里里美オフィシャルブログ
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美里里美Instagram

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